Tele-existence
テレイグジスタンス(Tele-existence)という言葉、概念あるいは技術をご存じだろうか。
極限的な現場にある対象と遠く離れていながら、あたかも現場にいるかのような作業ができないかと、通産省(現経産省)の大型プロジェクト「極限作業ロボット」として始まった。テレイグジスタンスという概念は、当時通産省機械技術研究所にいた舘暲(たち・すすむ)先生(東京大学名誉教授)が提唱したもので、和製英語だ。英語ではTelepresenceという。
1988年11月号の月刊「計装」のPhto- Reportというコーナで取り上げているから、取材したのはその年の夏であろう。もう34年も前の話だが、この数年、テレイグジスタンス技術が急速に注目されている。
当時と異なり、現在はロボット技術、センシング技術、コンピュータ技術が急速に進展し、その総合技術であるテレイグジスタンスの具体的な姿が見えてきたことにあろう。さらに通信技術として5Gの低遅延により、居ながらにして現場でほぼリアルタイムで作業できることが加わった。
現場にあるロボットの視覚・聴覚・触覚センサから、手にはめたグローブ、ゴーグル、ヘッドホーンを通じて臨場感を得る。逆にグローブの中で手を動かすことにより、まるで自分が行っているようにロボットに作業を与える。これはまるでVRの世界である。さらに3D技術や、赤外線、超音波などのインタフェース技術が確立されてくれば、世界観が変わってくるかもしれない。もちろんプロセス分野でのオペレーションやメンテナンスの在り方も変わるであろう。