石油に使用される流量計(2)

●容積式流量計

石油製品の流量測定に関して流体の物性で特筆すべきことは、電導度がほとんど無い絶縁物であること、製品の種類によって粘度などの物性が大きく違っていること、などが挙げられる。

また、流量測定の目的が取引であることが多く、この場合使用する流量計に制約があることも挙げられる。取引以外の目的で使われる流量計は通常の流量計が使用できるが、導電率の関係で電磁流量計が使用できないことに注意すべきである。

石油精製保税作業における原料課税に関して、原料原油及び各留出品の数量の確認にはそれぞれ法令の規定に合致するタンク検尺又は流量計により行なうことになっており、使用で きる流量計の種類は容積式流量計に限定される。

容積式流量計であれば全ての流量計が使用できると言うものではなく、取引証明用として認可された流量計である必要がある。言い換えるとこのような条件で使用することのできる流量計で取引証明用として認可される流量計は容積式流量計に限られることになる。

取引証明用流量計の中にも、揮発油(ガソリン)計量器のように容積式以外に軸流式の流量計が使用される場合もある。

容積式流量計は枡で一杯・二杯と計るやり方を連続で自動的に行なう仕組みを持った流量計であり、枡に相当する部分が計量室として内蔵されている。

計量室には幾つかの形があるが、代表的なオーバルギヤ式とルーツ式を紹介する。

<オーバルギヤ式流量計>

図1はオーバルギヤ式の動作を説明したものである。楕円形の歯車(オーバルギヤ)2個がお互いに長径と短径に接する形で組み合わさって回転する。



歯車が回転する部分はケースに収納されており、流体は図の左から右へと流れるとき歯車を矢印の方向に回転させながら歯車とケースの空間を通って下流へと流れる。

この時、流体が通過する空間は決まった容積であるため、歯車が回転する毎に決まった容積の流体が下流へと流れることになる。従って歯車の回転数を数えればここを通過した流体の容積を知ることができる。

オーバルギヤ式の場合2個の歯車が噛み合って回転するため、溶剤のような潤滑性を損なうような流体に使用すると歯車の噛み合いが悪くなり、滑らかな回転ができなくなる。

<ルーツ式流量計>

容積式の代表的な形式として、ルーツ式があり、図2にその構造を示す。



オーバル式がギヤ(歯車)で構成されていたのに対し、ルーツ式は歯車を持たない2個の繭形の回転子で構成されている。2個の回転子はお互いに接触せずパイロットギヤを介して連動する。

枡に相当する計量室は繭形の回転子とケースの間で構成される。

パイロットギヤはそれぞれの回転子に接続し、ギヤはケースの外側にあって噛み合っている。

このため、回転子自身は接触しておらず摩耗による消耗がなく長寿命が保たれる。

容積式流量計の特徴

容積式流量計には長所と短所があるが、石油製品の取引用としては長所の方が勝っている。

1.精度について

容積(体積)を枡で量っているのと同じであり、一般に高精度である。特に取引用に使われるものは±0.2%の精度が普通である。

2.流量計前後の直管が不要

差圧式や渦式などの流量計では必須条件である流量計前後(上流・下流)の直管部が容積式では不要となり、設置場所の選定が楽になる。

これは、測定原理や流量計の構造から判るように管内の流速分布や乱流等の条件に無関係であるためである。

3.流体の粘度に注意

流量計の中に回転部があるため、必ず隙間が必要となる。

この隙間によって、低粘度の流体では漏れが生じ低流量域では精度が低下する。

逆に粘度が高くなると隙間からの漏れが少なくなり、低流量域での精度保証範囲が広くなる。

4.異物の噛み込みに注意

構造を見ると判るように、流体は回転子とケースの隙間を通って流れるため、異物が流体に混入すると、隙間に詰まったり回転子に絡まって回転を止めることがある。

このタイプの流量計は流体によって回転子を回転さることによって、流体が流量計を通過するので、回転が止まると流体が流れなくなる。

このことは、他の流量計にはない特徴でこのようなトラブルの対策として流量計の上流側にストレーナを設け異物の浸入を防いでいる。

また、機械式の計器であるため定期的なメンテナンスが必要となり、この間流体を止める必要がある。メンテナンス等で流体を止めることが許されない場合は、流量計にバイパス管路を設ける必要があり容積式流量計の場合はバイパス配管を設けるのが一般的である。

ポータルサイトへ