連載【トラブル事例解説】現場計器に何が起きたのか

第4回 液面計 その1:差圧式/浮力式液面計

今回から2回にわたって,液面計のトラブル事例を紹介していきます。

■差圧式液面計■

圧力発信器を使って,簡単に液面を計ることができるのでタンクやドラムなどに多く使われている液面計です。

【事例①】

ドラムの底に取り付けられていたフランジ接続型差圧発信器(ダイヤフラム式)の指示が安定しなかった。ドラム内の液を抜き,発信器を取り外す作業をしていた。1970年代当時で発信器は重く2人で作業していた。ドラムの底は狭く,暗くて作業環境も悪かった。フランジから計器が外れた時,突然液が噴き出し作業員が火傷をした。

【事例②】

タンクのパージ式液面計が指示を低めに出しているのに気づかず,液を入れ続けていたところ突然タンクから重油があふれ出した。空気式の発信器に供給される,計装空気の減圧弁が故障していて,正しい指示が出ていなかった。

 

差圧式液面計は,液のヘッド圧を測定するという性格上ドラムなどの底部に取り付けられる。計器を取り外すときに,残液が残っていると吹きだしてこのような事故になる事例が多いのです。

事例①は,図1に示すように差圧発信器を外したときに,ドラム内にわずかに残っていた残液が吹きだしてきて起きた事故です。本来なら,脱液されて液が残ってはいないはずなのに,液がまだ残っていたのです。


図1 液面計を取り外していて被液


ドラム内の液は,時間が経って温度が下がってしまうと固まりやすい液でした。このため作業者は早く液面計を外さないといけないと思い焦っていました。

作業手順書では,計器の取り外し時の安全を確保するためフランジのボルトは全て取り外さず 1本だけ残しておくことになっていました。フランジ面が急に外れないようにするためです。しかし,作業者は早く作業を終えたいとの気持ちから,手順を守らず一気に全てのボルトを外した結果,残液が噴き出してしまったのです。

フランジ接続型液面計は,残液があれば一気に液が噴き出します。さらに,狭い場所では作業がやりにくいこともあります。

昔から,フランジ取り付けの計器を外すときには,計器の脱落を防止するため,長尺ボルトを使えと言われています。取り外し時に,フランジのボルトの一部をかなり長いボルトに差し替えてボルトを緩めた時に,発信器が一気に外れてしまわないよう安全策をとる作業方法です。

計器を取り外すときの作業方法がきちんと要領書として明文化されているか確認してみて下さい。さらに,作業員には手順を守ることの大切さを繰り返し教育して下さい。先人の貴重な事故の教訓を無にしないよう心がけたいものです。

事例②は,液面計の故障に気づかず,図2に示すように液がタンクからオーバーフローして溢れ出た事故です。計器というものは,時には故障します。しかし,めったに故障しないことから,運転員は計器は常に正しい指示を出すと思い込んでしまうこともあります。計器は,常に何かと比較して正確さを確認するよう運転員には指導してください。


図 2 タンクがオーバーフロー


■浮力を使った液面計■

液面測定には,フロート(浮き)を使った計器が多く使われます。液面の変動でフロートが動くことからその位置を計測して液面を測る計器です。原理が簡単なことから製造現場では数多く使用されています。

多くのトラブル事例もあるのでいくつか紹介します。

【事例①】

タワーの底部にフロート式液面警報 SWが設置されていた。液面が高くなると異常警報を出す目的で設置されていた。あるとき,プラントをスタートさせタワーに液を張り込んでいた。運転員は,液面が一定量を超えればレベル SWで警報が出ると安心していた。ところが,レベル SWが故障していて警報が出ず,タワーが満液状態になり溢れ出た液で爆発事故が起きてしまった。

【事例②】

タンクの上部に,液面Hiを検知するレベルSWが設置されていた。ガソリンをタンクに入れていたところ,突然タンクからガソリンがあふれ出し漏れたガソリンが着火して大火災となった。液面を測るためにタンクゲージも設置されていたが,老朽化していたのに点検もせず使っていたため正常な値を示していなかった。

事例①も②も事故の原因は,レベルSWのフロートに穴が開いていたことによるものです。フロートの中に液が入り込み浮力が生じなかったことにより正しい動作をしなかったのです。

フロートを使った計器は,浮力が得られなければ誤差となり正しい指示を出さなくなります。フロートに穴が開いてしまえば,完全に使い物になりません。フロートの材料選定を最初から間違っていたか,定期的な点検を怠ればこのような事故になります。

設計段階でのミスは,時間が経ってから思わぬトラブルとなります。設計に携わるエンジニアは多くのトラブル事例を学んでほしいものです。

事例②はレベル SW とタンクケージの故障が重なって起きた事故です。どちらの計器も,設置以来20年ほど点検がされていませんでした。レベル SWのフロートは鉄製だったため腐食で穴が開いてしまったのです。タンクゲージはテープでつながったフロートを液面に浮かべるタイプのものでした。長期間点検もせず使ってきたことから,テープの部分にしわができて円滑に動かず時々引っかかる状態でした。このため,実際の液面より低めの指示を出していたのです。

計装設備の「定期的点検」の大切さを教えてくれるトラブル事例です。今まで,一度も点検したことがないような計器があればすぐに点検してください。

化学プラント安全研究所 半 田 安


ポータルサイトへ