連載【トラブル事例解説】現場計器に何が起きたのか

第3回 流量計 その2:面積式 / 容積式流量計

前回は代表的な流量計であるオリフィス式流量計を取り上げトラブル事例について紹介しました。今回は,面積式や容積式流量計など他の形式の流量計についてのトラブル事例を紹介していきます。

■面積式流量計■

ロータメータなどと呼ばれる面積式流量計は,比較的安価で配管に直接挿入して簡単に取り付けられるため現場でよく使われている流量計です。検出部の材質は,流体により金属製かガラスなどが使われています。ガラスが使われる流量計では,ガラスが割れることにより多くの事故が起きています。

【事例①】

夜間ガラス製のロータメータ流量計の流量を運転員が調整していた。突然,ガラスが割れ破片が目に突き刺さり失明してしまった。ガラスの破損防止用防護カバーは,昔は取り付けられていたがいつの間にか無くなっている状態だった。

【事例②】

 

ガラス製のロータメータが割れ危険な苛性ソーダが周りに吹きだした。新設時,配管工事を行った協力会社の溶接技量が悪く配管がかなり曲がっていた。配管が曲がっているのに,無理矢理ロータメータを組み付けたためガラスに無理な力がかかっていた。

上記の事例①は,図1に示すように夜間運転員がパトロールでの作業中被害に遭った事故です。流体は空気で,ガラス製のロータメータで起きた事故です。深夜の流量調整作業でした。ロータメータが設置されていた現場は照明も少なく,暗く見えにくい場所でした。そのため,よく見えるようにと,保護メガネも外してロータメータに目を近づけて作業をしていたのです。そのとき,突然ロータメータのガラスが割れて破片が目に入ってしまったという労働災害です。

ガラスでできたロータメータが,割れた事故事例は多いのです。このため,ガラス製のロータメータの周りには保護カバーが設置されています。割れたときの破片の飛散を防ぐためです。この事故もロータメータのガラスを覆う保護カバーさえあれば,被害の軽減ができていたはずでした。

この事故の教訓は,ガラスは割れることがある。保護カバーのないものが現場に存在していればすぐに取り付けて安全な状態にせよということです。不具合を放置するとなぜ事故が起こるのかと言うことです。たかが保護カバーと甘く見ると事故になってしまうのです。


図1 ガラスが突然割れて事故になる


事例②はロータメータを配管に組み込むときに,施工上の配慮が足りなかったことにより起きている事故です。ロータメータは配管の一部に組み込むため,配管工事が必要です。工事業者の腕が良ければ問題はないのですが,配管が垂直になっていない状態では計器の精度にも影響します。面間などの寸法が合わないのに無理矢理計器を取り付けてしまったり,配管の芯ズレなどがあれば今回の事故のように,ガラスに無理がかかり割れてしまうこともあるのです。

ロータメータの設置工事では,ロータメータを取り付ける前に配管の施工状態を必ず確認してください。取り付け後では,現場を見ても無理な力がかかっているかは,見抜くことは難しいからです。

■容積式流量計■

容積式流量計にはオーバル流量計などが現場でよく使われています。配管に直接挿入して,高精度で計測できるのが特徴です。よく使われる反面,いろいろなトラブル事例があるので災害に遭わないように注意してください。

【事例①】

オーバル流量計の指示部の針が動かなくなったと製造部門から連絡があった。計装担当者が,指示計部分だけを取り外して点検しようとネジを緩め始めたところ高温の液が噴き出し火傷を負ってしまった。担当者が構造をあまりよく理解しておらず,誤って接液部側のネジを緩めてしまったのである。

【事例②】

タンクローリへ液を積み込む量を測定するオーバル流量計が故障した。積み込む量が一定量になると,自動的に供給配管に設置された流量調節弁が閉まる仕組みだった。ところが,流量計が故障していたため,ローリから液があふれ出してしまった。

上記の事例①は,化学プラントの計装保全担当者が引き起こしたトラブルです。「構造原理」がよくわからないのに分解作業を実施して起こった事故です。たとえ,構造を理解していても,念のため図面をみて再度確認をすることが基本です。

特に,配管に直接挿入しているインライン計器と呼ばれる計器は,安易に分解すると事故が起こることがあります。

計器の構造がわからなければ,計器メーカにアドバイスを求めたり,計器メーカに点検をゆだねるなどしてください。計器の分解点検で,中途半端な知識で起こる事故や労働災害は多いからです。

事例②のトラブルは,タンクローリへの充填設備に使われている写真1に示すような流量表示機能のついた容積式流量計で起こったものです。オーバル本体と表示部を連結する金属製のピンが折損していたため,実際には液は流れているのに,流量表示部が動いていなかったのです。このため,積算量がカウントされず液がオーバフローしてしまった事故です。


写真 1 容積式流量計


このように計器の故障が,すぐに事故につながる設計は絶対に避けなければなりません。計器は時には故障することがあるからです。タンクローリ側に,投げ込み型の液面計を投入してオーバフローを事前に検知できるようにしておくのも一つのトラブル防止対策です。万一,流量計が故障していても安全が確保できるように冗長化した設計思想としておく必要があります。

化学プラント安全研究所 半 田 安


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