【Solution】

プラント点検における安全性と効率性を向上する ロボット・ドローンソリューション

1.はじめに

プラント業界においては,様々なIT・OT技術が日々導入され,操業の自動化が進んでいる。ロボット・ドローンはツールの一つとして自動化に貢献しているが,さらなる活用や課題について議論が続けられている。

本稿では,プラントの点検におけるロボット・ドローン活用の効果や課題,それらに対する当社横河電機(以下,当社)のアプローチについて述べていく。

2.スマートマニュファクチャリング

スマートマニュファクチャリングとは,生産・製造現場がDX化され,運用が効率的かつ安全に行われるコンセプトを指す。スマートマニュファクチャリングはプラントのパフォーマンス向上に不可欠な要素として考えられており,様々なプラントで取り組みが行われている(図1)。


図1 スマートマニュファクチャリングとは


当社はスマートマニュファクチャリングの目指す先として,プラントの自律化を考えており,ロボット・ドローンは自律化を構成するツールの一つとして強く期待されている(図2)。


図2 スマートマニュファクチャリングの目指す先


3.ロボット・ドローンソリューション活用の効果

ロボット・ドローン活用の効果については,一般的に3つの効果が挙げられる。

1つ目は点検の安全性向上である。これは点検員を危険な場所から遠ざけることを主に意味している。たとえば,石油・ガス・化学プラントにおける可燃性や有毒性ガスの漏洩の危険性をはらんだ場所や高所での点検作業をロボットやドローンに代替させることで,点検員の安全性が向上する。

2つ目は点検の効率化である。単純作業をロボット・ドローンに代替させ,人はより付加価値の高い作業に注力することを主に意味している。日々,点検員が行っている巡視点検をロボット・ドローンに代替できれば,点検員は点検に充てていた時間で高付加価値の他の作業を行うことが可能となる。

3つ目は点検の高度化である。人による点検のアウトプットを超えるアウトプットを,ロボット・ドローンで実現することを主に意味している。たとえば,各点検項目について定性的な判断が必要な項目については,人による点検ではその判断が属人的になってしまうが,ロボット・ドローンでは均一なデータを取得してAI解析などを用いて判断を行うので,アウトプットを同じ基準によって得ることができる。また,ロボット・ドローンに赤外線カメラを搭載することで,瞬時に温度を計測しデータ化するといった,人の五感を超えたアウトプットを提供する。

これら以外にも,人の身体への負荷の軽減や費用の削減も期待できる。

点検員による巡視点検では実際にプラント内を歩きまわり,目視による点検が行われている。夏場や冬場においては暑さや寒さにより身体へ負荷がかかる上,階段の昇降も大きな負荷となる場合が多い。

高所の点検においては,足場の組み立てや高所作業車の使用による莫大な費用がかかっており,さらにはその準備にかかる期間中にプラントの稼働を停止する必要がある場合には,停止期間の長さに応じて生じる稼働率低下も大きな課題となる。

固定カメラや測定器など,プラントの状態を監視するためのツールは,それ自体の設置場所と電源や通信設備なども必要になるため,より大きな敷地が必要になってしまう。

上記のような課題もロボット・ドローンによる巡視点検によって,一部を解決することができる。点検員の健康面の負荷をなくすことができるし,ドローンを使えば足場や高所作業者の出動が減らせ,期間も費用も少なくなる。固定カメラやセンサの数も減らせれば,プラント設備のスリム化も実現することができる。

4.ロボット・ドローンソリューション活用の課題

ロボットやドローンをプラント点検の手段とし,点検員からの代替を行いたい際には,いくつかの課題が生じる。

・【複数機体の管理】

点検する場所の環境,点検対象の取得したいデータの種類などにより,使用するロボットやドローン,ペイロードを使い分けなければならず,複数のロボット・ドローンの管理が必要。

・【安定した通信環境の構築】

各ロボット,ドローンに応じた通信環境の構築を行い,セキュリティについても現場の要求に応じたものの導入が必要。

・【データの管理と活用】

取得したデータを収集,管理,解析し,レポートするシステムが必要。

・【他センサとの共存】

ロボットやドローンが点検できない箇所や項目については,固定カメラやセンサを使って補完することが必要。

ロボット・ドローンソリューションの導入を成功させるために最も重要なことの一つはデータの活用である。ロボット・ドローンはデータ取得のツールの一つであり,そのデータをどう管理し,どう活用するかを導入時には綿密に決めておくことが必要である。

5.当社のロボット・ドローンソリューション

当社はプラント向けの計測器,プラントの分散制御システム(DCS)を提供しており,それらとロボット・ドローンを統合することで,プラントの自律化を目指している。

ロボット統合プラットフォームを開発し,DCSや様々なシステムと接続させることで,センシングとデータドリブンを連携させている。

ソリューションの根幹となるロボット統合プラットフォーム:「RMC」(OpreX Robot Management Core)は,異なる種類のロボットの管理,リアルタイムビデオストリーミングの表示,自動歩行ミッションの管理とデータの収集を行うことができる(図3)。


図3 ロボット統合プラットフォーム「RMC」


また,ロボットによって撮影されたデータは自動歩行ミッション完了後に自動的にRMCへ格納され,アナログ計器は,プラント現場の画像データAI解析アプリケーション:「PIA」(OpreX Plant Image Analyzer)によって値が自動で読み出される仕組みになっている(図4)。


図4 プラント現場の画像データAI解析アプリケーション「PIA」


RMC・PIAを使って考えられ得るユースケースの一つが,フィールドパトロールである。ロボットにカメラやその他センサを搭載し,人の代替となり巡視点検を行う。点検員は制御室などの遠隔地からRMCを通してロボットを操作することで,プラント現場の状況を把握することができる。ロボットが撮影した画像はRMCに送られ,PIAを通じてAI解析がなされた後,計器類の情報がレポートされる(図5)。


図5 ロボットを活用したフィールドパトロール


ロボットから得られたデータは,RMCを通じてさらに他のシステムへ送られ,活用される。当社が開発したCIサーバ(Collaborative Information Server)は,DCSや様々なシステムのハブとなるプラットフォームであり,DCSやロボットから得られたデータはこのCIサーバで合流し,使用者が欲しい情報にまとめて表示される。

たとえば,ロボットから得られた計器の値や現場の写真とDCSから得られた計器の値をCI サーバ上で表示することで,使用者は漏れなく現場の状況を把握することができ,遠隔からの監視がより精度の高いものに昇華できる。そのデータを既存のレポート作成システムに送れば,レポートの自動作成も行われ,点検の自律化を推進することが可能となる。

このように,データドリブンを中心とした一連のプラント点検フローを当社は提供している。ロボットソリューションを構築するにはソフトウェア,ハードウェア,コンサルティング,エンジニアリング,メンテナンスといった様々な要素が必要になってくるが,当社は計測器・DCSビジネスを通じて蓄積してきた技術と知見,体制を活用し,トータルソリューションプロバイダとしてロボット・ドローンソリューションを提供している(図6)。


図6 当社が提供するロボット・ドローンソリューション


6.さいごに

ラント業界においては,様々なIT・OT技術が日々導入され,操業の自動化が進んでおり,ロボット・ドローンはツールの一つとして自動化に貢献している。当社が提供するロボットソリューションは,プラント点検フローの安全性と効率性を向上させ,プラント操業の自立化に向けた第一歩を支援する。

)OpreXは,横河電機㈱の登録商標である。

横河電機 鈴木公治

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