シリーズ企画 計装ギャラリ「進化するプロセス計装機器」(第23回)

【プロセスセンサ】

国内本質安全防爆に適合した 2線式高精度/小形圧力センサ

1.はじめに

計装機器および分析装置の総合メーカであるエンドレスハウザーは,ラボ用途から制御や監視を対象とした幅広い製品群をラインアップしている。温度,圧力,流量,レベル,水質分析,ガス分析などの計装機器や分析装置のほか,ディストリビュータ,電源,表示器,記録計なども取り揃えている。

本稿では省スペースが要求される装置・設備に最適なコンパクトでありながら,国内本質安全防爆認証を取得した2線式高精度小形圧力センサについて紹介させていただく(写真1)。


写真1 当社の小形圧力センサイメージ


2.国内本質安全防爆取得小形圧力センサの特長とラインアップ

当社では圧力・差圧伝送器シリーズとして,差圧伝送器「Deltabarシリーズ」とゲージ圧・絶対圧伝送器「Cerabarシリーズ」をラインアップし,4-20mA HARTやPROFINET over Ethernet-APLなどのデジタル通信に対応したモデルや国内外の防爆,船級,SILなど認証を備えた機器から小形圧力センサまでを取り揃えている。

設備・装置への組み込み用途ではシンプルな機能とコンパクトさが求められるため,IO-link圧力センサから本質安全防爆2線式圧力センサまでラインアップしている。本質安全防爆を取得した小形圧力センサ「PMx20シリーズ」のラインアップと基本仕様を表1に示す。


表1 国内本質安全防爆小形圧力センサ「PMx20シリーズ」基本仕様


3.実証設備から海外展開装置設備まで対応する幅広い国際認証とシリアル番号管理

当社の小形圧力センサ「Cerabar PMx20シリーズ」は,スケールアップや実地運用を前提とした実証設備から海外展開を見越した装置設備まで幅広い用途で実績を有している。

実証設備を国内外の事業所に設置する場合,搭載する計器についても各地域の認証が必要となる。これは,国内外に展開する装置・設備でも同様である。

これらの要求に対応するため,Cerabar PMx20シリーズでは国内本質安全防爆認証に加えて,幅広い海外防爆認証も取得している。具体的には,IECExに加えて,ATEX,CSA,FM,NEPSI,UK Exなどを取得している。

さらに船級(DNV,ABS,LR,BV,KR,RINA)や材料証明(EN10204-3.1),禁油処理なども標準オプションで提供している。

また,センサは全てシリアル番号管理されており,対象製品のシリアル番号を当社ホームページで検索すると,仕様や製造年月,販売状況(現行品または販売終了品)などの機器情報を確認することができる。

スマートフォンやタブレットでご利用いただけるアプリ「Endress+Hauser - Operations」もAndroidおよびiOS向けに提供しており,現場での仕様確認や取扱説明書の確認の効率化を実現する。アプリではシリアル番号を入力する方法に加えて,製品銘版上の二次元バーコードをスキャンすることで機器情報にアクセスすることができる(写真2)。


写真2 「Endress+Hauser - Operations app」


  4

.水素アプリケーションにも対応する金メッキオプション

小型圧力センサに防爆認証を必要とする用途の一つに,水素関連装置・設備のアプリケーションがあり,幅広い用途で圧力測定が行われている。

の水素アプリケーションでは,測定対象物の水素イオンが受圧面である金属メンブレンを徐々に透過することで,圧力値が異常になるトラブルが発生するケースがあり,水素透過と呼ばれている。

対策として,受圧面に金メッキを施すことで水素透過を抑制する方法が一般的であるが,従来は上位モデルでのみ提供されることが多く,過剰なスペックの機器が搭載されるケースも少なくなかった。

C

erabar PMP21では,標準オプションとして金メッキを提供することができる。これにより,水素関連装置・設備において寸法制限がある場所やコストを抑えたい用途などでコンパクトさと耐久性を両立した圧力センサ提供を実現した(写真3)。


写真3 金メッキを施したCerabar PMP21


 

5.封入液がなく,過大圧への耐性にすぐれた「Ceraphire」センサ

小形圧力センサシリーズのCerabar PMC21は,99.9%高純度酸化アルミニウム製セラミック圧力センサ「Ceraphire」を搭載している(写真4)。


写真4 「Ceraphire」セラミックセンサ


Ceraphireは静電容量式圧力センサであり,原理的に封入液がないだけでなく,受圧面が硬く厚みがあるため,過大圧などによる変形が小さいという特長を持っている。この特長から絶対真空環境にも耐えることができるほか,スラリ流体などに対する耐性も従来の金属メンブレンと比較して向上している。

また,封入液が入っていないため,破損により封入液がプロセス内に混入するリスクを回避することができ,装置・設備のプロセスリスク回避にも貢献する。

さらに,水素透過率が低い受圧面材質であると共に構造上封入液がないため,水素透過対策性能も備えている。

   

6.新製品「CompactLine Cerabar PMP43」により完成する小形サニタリ圧力センサラインアップ

小形サニタリ圧力センサであるCerabar PMP23は,3-AやEHEDGといった医薬食品飲料装置・設備の要求に沿って開発されている。また,洗浄要求に沿った仕様になっており,プロセス洗浄では135℃/1時間まで,装置・設備全体の洗浄に耐えるIP69オプションを提供する。

医薬品製造プロセスにおいては,防爆が要求される設備が多く存在するため,それらの要求を満たすためにCerabar PMP23は国内外の本質安全防爆を取得している。

さらに,医薬品食品飲料プロセスにおいては,コンパクトでありながら高性能な圧力センサが要求されるケースも多い。具体的には,より高精度な圧力測定性能や広いプロセス温度範囲,食品添加物グレードの封入液や予知保全を実現する診断機能と現場表示ディスプレイを備えていながら,コンパクトさが要求される。

これらの要求に対応するため,2024年12月に新製品「CompactLine Cerabar PMP43」が発売された。本製品では,これらの要求に答えた最高圧力精度±0.075%,最高プロセス温度~200℃,FDA植物オイル封入液,自己診断機能Heartbeat Technologyに加えて,液晶ディスプレイとBluetoothを搭載している。また,本質安全防爆も取得申請中である(写真5)。


写真5 新製品「CompactLine Cerabar PMP43」


スマートフォンやタブレットでご利用いただけるAndroid/iOS用アプリ「SmartBlue」により,安全な場所から圧力センサにアクセスし,圧力指示値の確認や機器の設定などを実行することを可能にしている。さらに機器操作無効化機能など医薬品製造プロセスにおけるデータインテグリティ要求にも対応する。

7.まとめ

コンパクトさと適用範囲の広さを実現した2線式小形圧力センサは,装置・設備への搭載などを念頭に開発されており,防爆認証によりその適用範囲は大きく広がっている。近年では電解槽装置をはじめとしたグリーンエナジー関連設備への導入も増加し,そこからの要求に伴うオプションの標準化も進んでおり,本稿の水素アプリケーション対応もその一部である。

2025年に日本における創業70周年を迎えるエンドレスハウザージャパンは,温度・圧力・流量・レベルといった計装機器および液体・ガス分析装置と周辺ソリューションサービスを展開しており,ユーザにとってのプロセス改善パートナを目指している。国内10拠点と125ヵ国のグローバル販売サービスネットワークに加えて,幅広い国際認証取得製品と最新テクノロジーを提供し続けることでユーザと共に成長することができれば幸いである。

エンドレスハウザージャパン 安藤裕幸

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