【製品動向:ベンダ・プレゼン】
マイクロ波を利用したレベル計の最新動向
1.はじめに
マイクロ波は通信,医療,産業など幅広い分野で活用され,レベル計測の分野においても1970年代にマイクロ波を用いた高精度レベル計が誕生した。それ以降,マイクロ波を用いたレベル計測技術の進化は日進月歩であり,使用用途は大きく広がっている。
マイクロ波を利用したレベル計には,計測対象物に接触させることでレベルを計測するタイプと接触させないで計測するタイプがある。接触タイプはマイクロ波がプローブ表面を伝搬するため,小口径の小型タンクや狭い空間でも使用可能である。一方,非接触タイプは計測対象物に接触しないことから計測対象物の変化に対して影響を受けない特徴がある。
本稿では,最近のエレクトロニクス技術の進歩により,計測信頼性と操作性およびメンテナンス性が向上した,接触タイプのガイドパルス式レベル計と非接触タイプのマイクロウェーブ式レベル計の最新動向について記述する。
2.ガイドパルス式レベル計の概要
当社の液体用レベル計であるガイドパルス式レベル計は,主に製造プロセスにおけるタンク等に設置する「GW100シリーズ」と産業機械装置等に使用する「GW200シリーズ」で構成する。
GW100シリーズは堅牢なハウジング構造により,屋外で使用する場合も保護構造物を設置することなく使用が可能である。一方,GW200シリーズは,小型ハウジング構造で外部から計測表示の確認ができ,直流電流信号 4-20mAに加えて警報接点出力を備えており,小型装置での使用に最適である。機器組み込み用から大型設備まで幅広い用途で使用可能なレベル計である(写真1)。
2.1 動作原理
ガイドパルス式レベル計・GW100/200シリーズは,液体計測で重要な信頼性と操作性を追求した,時間領域反射率測定法(TDR;Time Domain Reflectometry)を採用している。プローブ上端から先端に向けて発射したマイクロ波は,プローブ(ロッドまたはワイヤ)表面を伝搬し,比誘電率が変化する位置(測定液表面)で反射する。反射波はプローブを逆行し,センサで受信される。センサは発射してから受信されるまでに要した時間をレベルに換算し,直流電流信号4-20mAに変換して出力する(図1)。
2.2 GW100/200シリーズの特長
(1)クイック設定で簡単調整を実現
実液を投入することなく,プローブ長・ゼロ点・スパン点の実寸法をmm単位で入力するだけで計測が可能である(図2)。
(2)泡発生時における確実な液面計測
水の流れ込みや攪拌などにより発生した液面の泡は検出せず,実際の液面のみを計測する。
(3)耐付着性能
可動部がないため付着物によって可動部が固着し,計測異常が発生することはない。粘性の高い付着物や蒸気の影響もほとんど受けない。
(4)抜群のメンテナンス性
ハウジング部とプローブ部で分離が可能なため,修理交換などのメンテナンスが容易である。
(5)タンク内の障害物や攪拌機の影響を回避
タンク内の攪拌機や障害物などからの不要波をセンサに記憶させ,不要波による計測への影響をキャンセルする機能を標準搭載。
(6)3.0MPa / +150℃の環境でも高い信頼性を発揮
ロッドタイプおよびワイヤタイプの耐圧力は3.0MPa,耐熱温度は+150℃ Max.を実現。
(7)自己診断機能
液面からの反射波が十分に得られなくなった場合に起こる計測異常や,ケーブルの断線や電子部品の破損など機器の異常により,正常に動作しない場合に警報を出力する。(GW200シリーズ)
(8)警報出力:最大5点警報(NPN/PNP切り替え可能)
警報出力は希望する液位で警報を出力するレベル警報と自己診断による計測異常,機器異常の中から最大5点を出力することが可能。またレベル警報に関しては動作点(ON点)や復帰点(OFF点)を個別に設定することができる。(GW200シリーズ)
2.3 豊富なバリエーションで用途に合わせた機種選定が可能
ガイドパルス式レベル計・GW100/200シリーズは,化学・食品・医薬品をはじめ,鉄鋼・紙・パルプ,工作機械や油圧装置,水処理装置などの産業機械に使用できるように設計されている。電極部もロッドタイプをはじめ,タンク頂部と天井の隙間が狭い場所にでも容易に設置することができるワイヤタイプ,塩酸や硝酸などの腐食性の高い薬液に適したPFAチュービングタイプ,食品や医薬品のプロセスタンクや貯蔵タンクに適したサニタリタイプなどを取り揃えている。
(1)ロッドタイプ:標準的なプロセスに対応
ロッドは約1000mm単位で分割でき,コネクタ部とロックビスで固定することにより,振動による延長ロッドの緩みを防止する。また,ロッドは計測長に合わせてmm単位での製作対応が可能である。
(2)ワイヤタイプ:取り付け高さが制限されるタンクの頂部取り付けに対応 ワイヤタイプはタンクの頂部に取り付けスペースがない場合に最適。ワイヤは計測長に合わせて容易にカットが可能であり,ロッドタイプと同様にmm単位での製作対応が可能である。 計測長最大8m(ワイヤ長8m)に対応。(GW200シリーズ) (3)チュービングタイプ:腐食性の高い薬液に対応 接液部材質のプラグ付チューブは,プラグにPTFE,チュープにPFAを使用しているため,腐食性の高い塩酸や硝酸などの薬液に最適。 (4)ヘルール取り付けタイプ:食品や医薬品に対応 ISO 2S相当のヘルール取り付けで食品や医薬品のプロセスタンクや貯蔵タンクに最適。対応するヘルールサイズは,ISO 1.5S相当以上から製作可能(写真2)。 3.マイクロウェーブ式レベル計の概要 近年,マイクロウェーブ式レベル計は周波数の高いミリ波(波長:1mm~10mm,周波数:30GHz~300GHz)を用いたレベル計が実用化され,粉体計測用のレベル計として多数使用されている。 ミリ波レーダは波長が短いために測定対象物を高精度,高分解能で検知できる特長がある。最近のエレクトロニクス技術の進歩により,安価で高精度な液体レベル計測が可能となっている。ここでは,ミリ波レーダ液体計測用「SLR100シリーズ」の最新技術情報を記述する。 3.1 動作原理 SLR100シリーズは,周波数変調連続波方式(FMCW)を採用している(図3)。 周波数が一定の時間に対して連続的に変化するマイクロウェーブ信号を計測物に向けて送信する。ある時間(t1)にある周波数(f1)で送信されたマイクロウェーブ信号は,計測物で反射して帰ってくるまでに要した時間Δt(t2-t1)後には,送信信号の周波数f2に変化している。この時の送信信号と受信信号の周波数差Δf が距離Dに比例する。 したがって,Δt=2×D/C(C:マイクロウェーブの速度)から距離Dを求めることができる。 3.2 SLR100シリーズの特長 ・SLR100シリーズは,小さなアンテナでビーム角が狭く,設置部の影響を最小限にし,幅広い設置環境に対応する(写真3)。 ●<日本電波法適合品 特定小電力無線局 工事設計認証取得> ・SLR120形(認証番号209-J00439) ・SLR150形(認証番号209-J00445) ●<防爆認証(国内規格)取得> ・SLR120形:JPEx 本質安全防爆/樹脂充填防爆/容器による粉じん防爆 ・SLR150形:JPEx本質安全防爆 (1)80GHz FMCWレーダ技術によりビーム角4°を実現 SLR120形はビーム角4°(SLR150形はビーム角8°)により,設置部の影響やタンク内の障害物の影響を最小限に抑えることができるため取り扱いが容易である。 (2)不感帯はセンサアンテナ先端より0mm&高精度±2mm 計測基準位置(センサアンテナ先端)からの不感帯が0mmであり,また精度は計測基準位置より0.25m以上の場合±2mm*1)と高精度であるため,小型タンクにおけるレベル計測や在庫管理用の計測機器として最適である。 (3)最大計測長30m SLR120形は,センサ本体外径Φ80mm,高さ145mm,質量約0.7kgのコンパクトサイズにもかかわらず,最大計測長は30mである。屋外での厳しい環境下においても,安定した計測が可能である。 (4)プッシュボタンプログラムによる簡単設定 SLR150形は,4つのボタンで調整及び機器の状態監視が可能であり,初期設定は2つのパラメータを入力するだけで稼働させることができる(図4)。 また,コミュニケーション機能として,HART 7.0,Bluetooth通信などもあり,「使いやすさ」を追求している。 (5)接ガス部材質は優れた耐薬品性能を持つPVDFを使用 (6)低消費電力(約0.8W)と短い起動時間 消費電力は約0.8Wと低く,遠隔地のバッテリを使用するアプリケーションに優位性を持つ。 SLR100シリーズは,3.6mAで起動し10秒以内に計測値となるため,従来機器と比較してエネルギー効率は高くなっている。 4.おわりに 高い信頼性を誇るガイドパルス式レベル計GW100/200シリーズとマイクロウェーブ式レベル計SLR100シリーズは,プラントにおけるプロセス制御のデジタル化やデジタル通信の要求が高まる近年の様々なアプリケーションに対応できるものと確信している。また,弊社では様々なアプリケーションに対応できるレベル計測機器やレベル制御機器,流量計およびプロセス用ガス分析計などを取り揃え,ユーザの要求にマッチした最適なソリューションを提供していく。 注) *1)計測基準位置より0.25m未満の場合±10mm
写真2 「GW200/GW100シリーズ」プローブ部
左からサニタリタイプ、チュービングタイプ、ロッドタイプ、ワイヤタイプ
図3 FMCW方式
写真3 「SLR120X形/SLR150X形」
図4 SLR150形:表示器
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