スキルアップのための計装機器/システム講座:(1)流量計

【製品動向:ベンダ・プレゼン】

相関式パルス超音波法を用いた 高精度な超音波流量計

1.はじめに

超音波流量計は,流体内の流速を計測し,水位の計測と水路形状から流体断面積を求め,これらの流速と流体断面積を乗じることにより流量を求める方式である。

当社は,1つのセンサ筐体で流速・水位を同時に測定し,相関式パルス超音波法を用いた流速測定により,水路内の流量を高精度に求めることが可能な面速式超音波流量計を販売している(写真1)。


流速・水位複合センサ       変換器      
写真1 面速式超音波流量計「FM-10」


面速式超音波流量計は,開水路や管路での非満,満管のあらゆる用途に適応可能である。そのため,開水路である上下水道の流入・放流水路,工場排水路,農業用水路,河川,発電所の導水・放水路などの様々な場所において流量の把握や流量監視に用いることが可能である。

以下に面速式超音波流量計(FM-10)の測定原理,特長などについて紹介する。

2.測定原理

面速式超音波流量計は,流速・水位複合センサを水路底に設置し,水路内の流速および水位を測定する。流速は,水深方向を最大32セルまで分割し,水深ごとの流速から平均流速を求め,流体断面積と補正係数により流量を求める方式である(図1)。


図1 設置概要


流量Qは下記の式で求める。

流量Q=V×A×k

・平均流速V:測定した流速分布vから算出

・流体断面積A:測定した水位hと水路形状から算出

・補正係数k:流況に応じて設定

水位は,水深(垂直)方向に超音波を発信し,水面で反射した超音波を受信するまでの伝搬時間から水位hを求める。

流速は,送信時間差Tを与えた超音波パルス対を水中に発信し,水中の懸濁物質からの反射波を受信して,その受信波の到達時間差Δtと流体中の音速cから求める(図2)。


図2 相関式パルス超音波法による流速測定


さらに,水深方向を複数のセルに区切って,各測定セルで同様な流速を求める処理を行うことにより測定セルごとの流速すなわち流速分布vを求め,それらから水深方向の平均流速Vを計算する(図3)。


図3 セル毎流速分布測定


3.特長

当社流量計は,以下の特長がある。

・流速・水位を1つのセンサで同時に測定。

・相関式パルス超音波法で高精度に測定。

・水深方向をセル分割し,水深ごとの流速を測定することにより,高精度な測定が可能。

・外部水位計と組み合わせて使用することも可能。

・あらゆる用途に対応。開水路,非満管,満管いずれにも適応可能。

・大容量なデータロガー機能搭載。計量法の特定計量器としての要件である各種設定の封印機能装備。

・設定はWebブラウザで簡単操作。

・センサ筐体内部には電子部品を内蔵しない構造のため,耐環境性に優れている。

4.仕様

流速・水位複合センサと変換器の主な仕様を表1,表2に示す。


表1 流速・水位複合センサの主な仕様


表2 変換器の主な仕様


5.操作

各種設定は,変換器とパソコンをLANで接続して,Webブラウザで行うため,操作が簡単である。

また,Webブラウザ上で流量・水位のトレンド,流速分布をリアルタイムで確認することが可能である(図4)。


図4 機器間接続


6.循環試験水槽での流量評価

循環試験水槽を用いて,校正された標準電磁流量計との流量計測比較評価を実施した。

循環試験水槽は矩形水路で幅0.3m×高さ0.3mである(図5)。


図5 循環試験水槽の概要


評価結果を図6に示す。標準電磁流量計と同等かつ高精度に測定できた。


図6 標準電磁流量計との比較


7.フィールド試験での設置事例

暗渠のΦ700非満管水路に専用取付金具を使用して流速・水位複合センサを設置した事例である(写真2)。


写真2 流速・水位複合センサの設置事例


評価結果を図7,図8に示す。流量値は,既設電磁流量計と同等の傾向を示しており,流量の変化も捉えることができている。また,各月の既設電磁流量計の平均流量と比較しても,良好な相関が得られた。


図7 既設電磁流量計との比較



図8 平均流量の相関グラフ


8.適用事例

面速式超音波流量計は,流量の把握や流量監視することを目的として,下水処理場では,流入下水量の監視および河川への放流量を把握するため,工場では,工場からの排水量(総量規制基準を遵守)を監視するため,農業用水では,河川やダムなどからの取水量を監視するために使用されている。

9.おわりに

当社は,実際に流速・水位複合センサを設置する上において,水路条件や設置環境など様々な課題を検討した上で,流速・水位複合センサの設置場所や設置方法についての豊富な実績があり,それぞれの現場に応じた最適な提案や提供をすることができる。

様々な用途における流量管理に面速式超音波流量計FM-10をお役立ていただければ幸いである。

JFEアドバンテック 笹田佳彦

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