【水処理計装ソリューション】
水処理装置における簡易制御ユニットの活用
1.はじめに
当社では,プログラムを容易に作成することを目的とした新たなプログラミングの方法として,「ブロック遷移制御方式」を開発した。そして水処理装置の制御ユニットとして,同方式を採用したマルチファンクションコントロールユニット「Sensing eye 724」(写真1)を市場提供している。
本稿では,この製品を使用した水処理装置の活用事例を紹介する。
2.「Sensing eye 724」の特徴と機能
2.1 ブロック遷移制御方式
制御プログラミングには,前述のブロック遷移制御方式を採用した専用ソフトウェア「Sensing eye tool for 724」を開発している。本方式では,制御プログラムを,プログラムを組み合わせた機能ブロックとして作成していく。
本方式でいうプログラムとは,本方式での最小単位である。プログラムでは,タイマ,カウンタなどの様々なイベント,フラグ,そして入出力の状態などの動作条件に応じて,指定動作を行ったり,ほかの機能ブロックに移動させたりする制御動作の設定を行う。この動作条件は,複数の連結が可能であり,より複雑な動作条件での制御動作も可能となっている。
ブロックとは,プログラムの集まりを管理する単位であり,ブロックを機能ごと明確に分けて作成することによって,制御プログラム全体をわかりやすいものにすることができる。なお,プログラム作成中は,入出力,イベント,そしてその他の設定を別ウインドウで表示させることができるため,各設定を確認しながら進めることが可能である。
本方式では,ブロックを遷移(移動)させることで機器全体の制御を行う。逆に,ブロックを遷移しない場合は,ブロック内の動作を繰り返す。このような性質のプログラムとブロックを組み合わせていくことによって,制御プログラムを実現している。
本製品は,メンテナンス性にも配慮している。一通りの機能ブロックをまとめて完成した制御プログラムは,そのまま設定ファイルとして保存することができる。その設定ファイルを,マイクロSDカード経由で本体にインストールする形式を採用しているため,現場でのアップデート作業には,パソコンを使用せずに短時間で容易に済ませることができ,また,作業スペースもとらない。現場によっては,パソコンの持ち込み禁止にしているところもあり,この場合でもアップデートの対応が可能である。
設定ファイル自体は,単純な,数値入力とリスト選択のみで作成される。また,個々の入出力ポートの設定,イベントやフラグ,メモリの設定,ブロック,そしてプログラムの個々の制御に名称を付加することができるため,その名称や設定上の語句(数値含む)を検索する機能や,どこにどのような機能(名前)を割り当てたか確認できる,一覧を別ウインドウで表示する機能を付加して,利便性にも配慮している。
そのほか,設定ファイルを改版する際には,任意の設定ファイルと現在の設定ファイルとで,差分のある箇所を色付きで並べて比較できる機能や,個々の入出力ポートの設定,イベントの設定,その他の設定,ブロック,そしてプログラムの個々の制御などを,作成中の設定ファイル上ではもちろん,任意の比較ファイルからもコピー&ペーストできる機能を付加しており,制御プログラムの作成支援機能も充実させている。
さらにこの専用ソフトウェアには,便利なデバッグ機能が備わっている。設定ファイルを作成した後は,本製品を実際の制御システムに組み込んで,専用ソフトウェアがインストールされたパソコンとシリアル通信接続することで,制御プログラム全体の動作を,目で追いながら,事前検証することが可能となっている。
2.2 制御ユニット
Sensing eye 724は,様々な制御に必要な便利な機能が内蔵されており,機能を組み合わせることで柔軟な制御を可能にしている。簡単な自動制御が必要な装置から,本格的な制御が必要な装置まで,幅広く使用できるようになっている。
入出力機能として,基本的なスイッチや電磁弁などの接続用としてのデジタル入出力機能に加え,水質センサの接続用として専用の水質測定機能(電気抵抗率×1/電気伝導率×2)がある。また,汎用的なアナログセンサの接続用としてアナログ測定機能,流量センサやカウンタなどの接続用としてパルスカウント機能,そしてタッチパネル,その他の通信接続用として,Modbus RTUプロトコルに対応したシリアル通信機能(RS-232C×2/RS-485×2)を盛り込んだ,専用ソフトウェア付属のマルチファンクションコントロールユニットである。
水質測定ポートには,当社の水質センサが直接接続できるため,変換器などの本体は不要であり,制御盤のスペースを削減することが可能である。また,入出力ポート数としては,水質測定ポート3点,アナログ入力14点,デジタル入力18点(うち,パルス入力兼用8点),デジタル出力24点(FETオープンドレイン出力),シリアル通信ポート4点と,非常に充実したものになっている。
設定要素としては,入出力の設定のほかに,基本的なイベントであるタイマ,カウンタをはじめ,周期的なタイマ制御ができる期間タイマ,各種入出力状態/マルチメモリ/ワードメモリの状態を検出することができる汎用イベント,タッチパネルなどの入力機器のスイッチと連動させることができるスイッチイベントがある。その他の設定として,四則演算/任意の数値保持/カウントアップ/カウントダウンができるマルチメモリ,ON/OFFが記憶できるフラグ,さらに任意の数値保持/カウントアップ/カウントダウンができるワードメモリと,豊富なイベント,その他の機能を備えている。これらを個別に設定することによって,様々なイベントに,柔軟に対応することが可能である。
3.活用方法
Sensing eye 724は,各種センサ情報を取り込み,装置の機能維持に必要な消耗品の管理や機器の異常監視などを行う装置の制御装置として広く使用可能であるが,本製品が得意とする水処理装置を事例に具体的な活用方法を示す。
まず,事例とする水処理装置の概要を示すため,システムフローと周辺接続機器(図1),Sensing eye724周辺接続回路(図2),タッチパネル画面(図3)を示す。
本事例の装置は,水道水から純水を製造する水処理装置となっており,RO膜を使用して一次純水を製造し,その後イオン交換樹脂を通して純水をタンクに貯水する装置である。
デジタル入力に,パルス出力タイプの流量センサ,タンクの水位監視にレベルスイッチ,ポンプ駆動用マグネットスイッチのサーマル接点を接続し,流路の瞬時流量や積算流量,タンク水位監視とポンプの異常監視,アナログ入力には圧力センサを接続し,フィルタの目詰まりやRO膜の状態監視,水質センサはRO膜のイオン除去性能や,イオン交換樹脂の劣化などを監視している。
シリアル通信ポートには,ModbusRTUに対応している市販のタッチパネルを接続して,運転操作,データおよび警報の表示を行っている。タッチパネルのスイッチやデータはSensing eye 724の内部データアドレスを公開しているので,アドレスを指定するだけで使用できる。また公開しているアドレスは専用ソフトウェア上ですぐに確認できるため(図4),タッチパネル画面作成の際もアドレスの確認が容易であり,作画時間の短縮ができる。
デバッグにおいては,専用ソフトウェアのデバッカを使用することで,計測データ,入出力ポート状態,各種イベントやタイマなどの状態や設定値のデータをシリアル通信で接続されたパソコン上で確認できる。(図5)タッチパネル上にデバッグ用の画面を作成せずとも確認や設定の変更ができるほか,作成したプログラムの動作確認として,ブレークポイント機能やプログラム動作を1ステップずつ実行することが可能であり,作成したプログラムが正しく動作しているか確認することできる。
なお,本製品のデジタル入力,アナログ入力,シリアル通信の各ポートは,接続する機器に電源(DC24V)を個別供給可能であり,配線作業の省力化も図ることが可能となっている。
4.おわりに
本稿では,マルチファンクションコントロールユニットSensing eye 724を使用した水処理装置を用いて,使用方法について紹介した。全機能の紹介はできなかったが,使用する上でのヒントとして活用してもらえれば幸いである。
これからは,IoTとの連携を軸とした装置の遠隔監視や,データの記録から故障時の原因解析,メンテナンス時に必要な部品の推定など,効率的にメンテナンスを行うための支援技術サービスなどが重要になってくると思われる。